器のプロと「丹波焼の里」さんぽ♪ 850年の伝統とお気に入りの器をさがして。
- 掲載日
- 2026.10.09
- 最終更新日
- 2026.10.09
芦屋で18年半、器の店「bonton.」を営み、企画展などを通して全国の作り手の作品を紹介してきました。2025年3月の閉店後は、器のある暮らしを発信しながら、50代からの女性に向けたライフデザインコーチとして活動しています。
- 居住地
- 大阪市
- 趣味
- 器、料理
INDEX

器の店を18年半営んだ横井れいこさんと850年の歴史を誇る日本六古窯・丹波焼の故郷へ。体験型拠点「TAMBA GATEWAY CENTER」をはじめ、窯元訪問や地産地消ランチなど魅力満載なスポットを巡る旅。秋の深まりとともに楽しむ、里山の器探し旅へ出かけてみませんか?

「丹波焼(丹波立杭焼)」は、瀬戸・常滑・信楽・備前・越前と並び、日本六古窯(ろっこよう)の一つに数えられ、その始まりは平安時代末期(12世紀後半)。およそ850年ものあいだ、途絶えることなくやきもの作りが受け継がれてきました。
丹波篠山市の中心街から南西に約20キロ離れた立杭(たちくい)地区は、今も60軒ほどの窯元が作陶を続ける「丹波焼の里」として知られています。そうした丹波焼の歴史や魅力を体感できる総合施設が、「丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷(すえのさと)」です。
※丹波焼の里全体の窯元数は「約60軒」、丹波立杭陶磁器協同組合の組合員数は50軒です。
リニューアルした体験型拠点「TAMBA GATEWAY CENTER」のエントランス
場所は、舞鶴若狭自動車道・三田西ICから車で約10分、公共交通機関ならJR福知山線・相野駅からバスで約10分。およそ20,000平方メートルの広大な敷地内には、50軒ほどの窯元の作品が展示・販売されている窯元横丁やレストラン、陶芸教室など多様な施設が点在しています。
50の窯元の技法やモチーフが集結した、壁一面の丹波焼モザイクタイルアート
50の窯元の技法やモチーフが集結した、壁一面の丹波焼モザイクタイルアート
新たな体験型拠点「TAMBA GATEWAY CENTER」はどんなところ?
「立杭 陶の郷」を訪れたら、まず足を運びたいのが2026年4月にリニューアルした「TAMBA GATEWAY CENTER」です。とくにエントランスに入って正面の壁面にある丹波焼モザイクタイルアートは圧巻! 50の窯元から60人以上の陶工が参加し、ふだんの作品と同じ技法やモチーフで制作したタイルは、金魚や海老のモチーフや艶やかな色合いからマットな質感のものまで、丹波焼の多様性に驚きます。
企画展「The Living Spiral 生きた螺旋」が開催されているモダンなテーマ展示室
左手に進むと、約160平方メートルのテーマ展示室があります。「陶の郷」は2026年4月から入園無料になりましたが、テーマ展示室は有料になります。観覧料は高校生以上500円/小・中学生120円。ここでは丹波焼の歴史や技法を紹介する企画展「The Living Spiral 生きた螺旋」が開催されていました。
現代の陶工により伝統的な手法で作られた丹波焼の壺が並ぶ
赤土部・白丹波・黒丹波の展示
器の水漏れを防ぐために塗った化粧土が、焼成したことで鮮やかな赤に発色した「赤土部」。白い泥をかけて焼いた優雅な「白丹波」。マンガンを含む岩石由来の石黒釉などを用いた艶やかな「黒丹波」に着目。伝統の良さを継承しながら新たな色彩の美を追求した、個性あふれる作品世界を堪能できます。 「赤土部」のような赤い器は、食卓をぱっと華やかにするのでポイント使いもおすすめです。
登り窯での焼成を追体験できる体験型展示コーナー
登り窯に薪を燃やして炎で焼成する様子を収録した映像と実際に器を並べて、火入れを追体験するコーナーや丹波焼の特徴である左回りの足で蹴るろくろなどもあり、五感で体感できる体験型展示になっています。
「丹波七化け」と呼ばれるように、時代や社会のニーズに合わせて、技法やデザインを自在に変化させてきた丹波焼は多彩な表情を持っています。予備知識がなくても、気に入った器から作家名を知るのもいいですし、知っている作家名から作品を見つけるのも楽しいです。展示室にはベンチがあるので、ゆっくり眺めながらお気に入りの器を探すのもおすすめです。
50の窯元が集結!「窯元横丁」でお気に入りの器を探して。
長屋風の店が立ち並ぶ「窯元横丁」の通路
「窯元横丁」の木製案内マップ
次は50の窯元が集結する「窯元横丁」へ。時代劇に登場する長屋のようなレトロな店が連なり、まるで迷路のよう。部屋ごとに窯元の個性あふれる器が陳列され、実際に手に取って重さや手触りなど吟味することができます。
鮮やかな青色の丹波焼の浅鉢
初めて丹波焼を買うならどんな器がおすすめ?
器の店を18年半営んだ横井れいこさんのおすすめは、直径21センチほどの平皿です。朝食にパンを置いたり、夕食時にはメインを乗せたりと使い勝手抜群です。浅鉢も汁気のある煮物や麺類などいろいろな料理に対応できて便利ですよ。「窯元横丁」で気になった窯元があれば、「陶の郷」周辺にある工房へ直接足を運んで見学することも可能です。
850年の時の重みを伝える「現存する最古の登り窯」
兵庫県の有形民俗文化財「丹波焼最古の登り窯」の外観
兵庫県の有形民俗文化財「丹波焼最古の登り窯」の外観
陶の郷から集落の細い路地を少し歩くと、ゆるやかな山の斜面に横たわる巨大な土塊が目に飛び込んできます。全長約47メートル、9つの焼成室(袋)を持つ登り窯は、蛇が斜面を這い上がるような姿から「蛇窯(じゃがま)」とも呼ばれ、明治28年(1895年)に造られました。兵庫県の有形民俗文化財にも指定されている、現存する最古の登り窯です。130年以上経ったいまでも現役で使われていて、火入れのときは、窯元たちが交代しながら3昼夜、24時間体制で大量の薪をくべ続け、最高温度は1300度まで達します。
「心春日和」の木箱ランチでたくさんの丹波焼に触れる
「心春日和」の店舗外観
丹波焼の歴史に触れた後は、地元の食と器のコラボレーションを楽しむランチへ。「陶の郷」をあとにして向かったのは、車で5分の「心春日和 -和cafeと木箱ランチのお店-」。器好きの筒崎夫妻が2023年9月にオープンした、平日でも予約が取りにくい地産地消レストランです。1階はテーブル席、2階は10畳以上ある座敷で、4人が座れる座卓が4卓。真ん中の空間にはプレイマットが敷かれ、子連れファミリーが安心して食事を楽しむことができます。
木箱を開けると・・
「木箱ランチ」(2,200円税込)
おすすめは「木箱ランチ」です。運ばれてきた35センチ×46センチの大きな木箱の蓋を開けると、十五穀米のごはんとお味噌汁、色とりどりの惣菜が10品も! 訪れたときのメインのおかずは、3周年記念の限定メニューの野菜のかき揚げ。注文が入ってから一つずつ丁寧に揚げているので、揚げたてサクサクの食感です。小鉢に盛られた惣菜の内容も2ヶ月ごとに全て刷新されるというから驚きです。

器はすべて丹波焼。オーナー夫妻が50以上ある窯元を訪ね歩き、集めたものです。とくに豆皿の使い方や盛り付けは、日常の暮らしへのヒントやインスピレーションを与えてくれます。気に入った器があれば、ご主人がどんな窯元なのかやさしく教えてくれます。
伝統を継承し挑戦を続ける、俊彦窯・清水剛さんを訪ねて
丹波焼をより深く知るため、俊彦窯(としひこがま)の清水剛さんを訪ねました。俊彦窯は、民藝運動の大家・河井寛次郎の弟子である生田和孝氏に師事した清水俊彦さんと、その息子の剛さん、奥さんの仁子さんが作陶を行う人気の窯元です。自宅とギャラリーと工房が隣接していて、ギャラリーでは作品も購入できます。
俊彦窯のギャラリー
丹波焼は、全国的にも珍しく卸業者(問屋)を間に挟まない産地です。多くの焼き物産地では問屋が流通を担うのが一般的ですが、丹波焼では窯元自身が土作りや成形、焼成、そして販売に至るすべての工程を一貫して手がけています。
工房内の成形途中の器
工房内の成形途中の器
俊彦窯の清水剛さんと丹波焼の歴史について器談義
丹波焼のバリエーションと多種多様な技法が生まれた理由を、清水さんはこう話します。
「丹波焼の歴史を紐解くと、丹波焼は決して恵まれた立地条件ではありませんでした。内陸の山あいに位置する丹波は、海に近い産地のような船による輸出経路がなく、物流面で大きな制約を抱えていました。その厳しい環境の中で生き残るため、当時の陶工たちは京都や大阪の商人たちからの、こんな器を作れないかといった多様なニーズに柔軟に応え続けてきました。そうした生き残るための危機感によって丹波焼の多様性が生まれ、技法が進化してきたのです」過酷な立地条件を「多様性と柔軟性」へと変えてきた850年の歴史をもつ丹波焼。進化は止まることなく、現代のライフスタイルにも自然と溶け込む懐の深さを持っています。
「丹波焼陶器まつり 秋の郷めぐり」開催中(10月9日〜18日)
毎年秋には「丹波焼陶器まつり 秋の郷めぐり」が開催されています。詳しくはHPをチェック!
https://tanbayaki-toukimatsuri.com/
いくつもの煙突と窯元が点在し、今もなお陶工たちの手で日々の器が生み出されている里山の静かな風景。お気に入りの器を探しに、丹波篠山の里を訪れてみてください。
高源寺の紅葉
少し足を延ばして訪れたいのが、「丹波紅葉三山」の一つとして名高い高源寺(こうげんじ)です。開山の遠谿祖雄禅師が、中国・杭州の天目山での修行を終えて帰国した際に持ち帰ったとされる「天目楓」を中心に、約200本のカエデが境内を鮮やかに彩ります。見頃は11月上旬頃。惣門から山門へと続く参道上を覆う美しい紅葉のトンネルは圧巻。苔むした石段や多宝塔を鮮やかな紅葉が包み込む光景は、息をのむ美しさです。
【よくあるご質問】
(Q)丹波焼の窯元は見学できる?
(A)ほとんどの窯元にショップやギャラリーが併設されており購入できます。ただ工房の作業工程を見学することは時期や時間によってできないこともあるので、事前にお問い合わせしたほうがいいですよ。
(Q)丹波焼の里へは公共交通機関で行ける?
(A)電車とバスを利用して行くことができますよ。JR福知山線 相野駅からウイング神姫バス(路線バス)で約10~15分です。
(Q)陶の郷では約50の窯元の器を比較できる?
(A)「窯元横丁」では50の窯元が集結しているので、手に取ってじっくりと吟味することができます。
【DATA】
◇ 丹波伝統工芸公園「立杭陶の郷」
兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3
TEL:079-597-2034
営業時間:10:00~17:00(陶芸教室は15:30最終受付)
定休日:火曜日(祝日は営業)
入園料:無料
TAMBA GATEWAY CENTER(旧:伝習会館・展示施設)
観覧料:高校生以上:500円/小・中学生:120円
◇ 心春日和 -和cafeと木箱ランチのお店-
兵庫県三田市西相野578-28
TEL:070-1800-4288
営業時間:11:00~15:30(15:00L.O.)
定休日:日曜日
https://www.instagram.com/koharubiyori_sanda/
◇ 俊彦窯
兵庫県丹波篠山市今田町上立杭396
TEL:079-597-2647
営業時間:9:00~18:00(または日没まで、要確認)
定休日:無休
◇ 西天目瑞巖山 高源寺
兵庫県丹波市青垣町桧倉514
TEL:0795-87-5081
拝観時間(入山時間):8:00~16:30(閉門は17:00) ※10月~3月は8:30~16:30(閉門は17:00)
拝観料:大人 400円 / 中学生以下無料

















