NIPPONIAでめぐる福崎町・丹波篠山。古民家に泊まり、暮らすように旅する兵庫

掲載日
2026.10.01
最終更新日
2026.10.07

noi編集部員。国際線客室乗務員を経てアナウンサーに。ラジオ番組等で「旅の達人」として、全国各地の魅力を発信。現在は観光を切り口に、日本各地をつなぐイベントの企画・運営にも携わり、人と地域が出会う場づくりに取り組んでいる。

居住地
Japan
趣味
旅行
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貞包 みゆき
NIPPONIAでめぐる福崎町・丹波篠山。古民家に泊まり、暮らすように旅する兵庫

関西国際空港に降り立ったら、一つの土地に滞在し、その文化や暮らしを深く味わう旅へ。NIPPONIAは、地域に残る古民家や歴史的建築を宿泊施設として再生し、その土地ならではの文化や暮らしに触れる滞在を提案している。今では全国各地へと広がるこの取り組みは、兵庫県丹波篠山で生まれた。


きっかけは、空き家が目立ち始めていた丸山集落の再生事業。2009年に始まったこの取り組みは、2015年に「篠山城下町ホテル NIPPONIA」として形になり、地域に点在する歴史的建築を宿として活用する「分散型ホテル」のモデルへと発展していった。


兵庫県のNIPPONIAをめぐり、それぞれの土地に受け継がれてきた物語をたどる旅へ。最初の舞台は、妖怪伝承が息づく福崎町だ。

【DAY1】福崎町 妖怪伝承が息づく町をめぐる。

妖怪ベンチと河童に出会う、辻川山公園

辻川山公園にある大型の妖怪像。これは夜の山で太鼓を打ち鳴らすと言われる妖怪「やまばやし」。


関西国際空港からリムジンバスで姫路駅まで約2時間。そこからJR播但線に乗り換えれば、30分ほどで福崎駅に到着する。都会の喧騒を離れ、緑豊かな田園風景が広がる福崎町は、旅の最初に訪れたい日本の原風景が残る町だ。


福崎町は、日本民俗学の父と呼ばれる柳田國男(Kunio Yanagita)の故郷。彼が幼い頃、市川のほとりで出会ったという河童の逸話を著書『故郷七十年“Seventy Years of My Hometown” 』)に記したことから、今では「妖怪の町」として知られている。 福崎駅から河童や天狗をモチーフにした「妖怪ベンチ」を探しながら歩き、まず訪れたいのが辻川山公園だ。


福崎駅からは徒歩、またはレンタサイクルで。町内に点在する「妖怪ベンチ」のうち、福崎駅から辻川界隈にかけては9基ほどがあり、妖怪たちを探しながら町歩きを楽しめる。

将棋が好きと言われる河童。妖怪ベンチに座れば一緒に写真が撮れる。

妖怪ベンチ「アマビエ」。疫病退散の妖怪として知られ、その姿を描くと病気を防ぐと伝えられている。

河童の兄弟。池のほとりの「ガタロウ」と、水中から現れる弟「ガジロウ」。


ユニークな妖怪ベンチとの記念撮影を楽しんだら、公園の池にも足を運んでみたい。
そこには河童の兄弟「ガタロウ」と「ガジロウ」が棲んでおり、9時から21時まで、15分おきに水中から勢いよく姿を現す仕掛けが用意されている。
これは、柳田國男が著書に記した、市川に伝わる河童「ガタロ」の逸話をモチーフにしたもの。出現時間になると、水面を破って飛び出す河童が現れ、訪れた人たちを楽しませている。


辻川山公園
 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1038-12
 出入り自由(入園無料)


福崎町観光協会

 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1470番地1

 電話:0790-21-9056

 HP: https://fukusakikankou.jp/yokai/


妖怪伝承を記録した民俗学者・柳田國男の生家

柳田國男が1884年まで暮らした家。「日本一小さい家」と自ら呼んだという。


公園を抜け、緩やかな坂道を上った先にあるのが、河童や天狗の伝承を後世に伝えた民俗学者・柳田國男(1875〜1962)の生家。福崎町の妖怪文化をひもとく旅では、欠かせない場所のひとつ。


記念館では、柳田國男が使っていた机のほかにも彼の直筆原稿や著作物などが多数展示されており、日本民俗学の父の足跡を間近で体感することができる。


生家のすぐ隣に建つ記念館でひときわ目を引くのが、柳田國男が使っていたという大きな机。数多くの引き出しや仕切りが設けられ、日本各地の伝承や民話を集め、整理していた仕事ぶりが偲ばれる。
この机に向かい、彼は多くの著作を残したという。なかでも代表作『遠野物語』"The Legends of Tono"(1910年)は、河童や天狗など不思議な話をまとめた一冊として知られ、今では英語や中国語、韓国語にも翻訳されている。
幼い頃からこの地で語り継がれる物語に親しみ、日本各地の伝承を記録した柳田國男。その足跡を受け継ぐべく、福崎町では妖怪や民俗文化を町の魅力として発信しているのだ。


 
福崎町立柳田國男・松岡家記念館
 住所:兵庫県神崎郡福崎町西田原1038-12
 電話:0790-22-1000
 開館時間:9:00〜16:30(入館は16:00まで)
 休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、祝日の翌日、12月28日〜1月4日
 入館料:無料

 HP: https://www.town.fukusaki.hyogo.jp/html/kinenkan/


NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の館で旅の余韻に浸る

夜、灯りに浮かび上がる「NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の館」。


妖怪伝承の背景を知ったあとは、今宵の宿へ。町に残る歴史ある一棟の建物で、一日をかけて触れた物語を静かに振り返る。
NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の館は、江戸時代(1603年–1868年)に地域の行政や暮らしを支えた大庄屋・三木家の邸宅を活用し、約300年の歴史を持つ建物を宿泊施設として再生した宿。民俗学者・柳田國男が幼少期を過ごした場所としても知られる。 


蔵をリノベーションした客室には、書物のセレクトショップ「YOURS BOOK STORE」が選んだ蔵書が並ぶ。


「NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の館」で過ごす夜は、町の記憶に触れる時間でもある。客室に並ぶ本を手に取り、妖怪や民俗文化に思いを巡らせながら、静かな読書のひとときを過ごそう。


かつて酒造りが行われていた空間を活用したレストラン「Farms' Kitchen 三木家」。

コース料理の一部。地産地消がコンセプトとされている。

夕食は、丹波黒どりや播磨灘の魚など、地域の恵みを生かした創作フレンチ。美しい器に盛られた料理を味わいながら、福崎町の豊かな食文化に触れる夜となる。


歴史ある蔵の静かな空間で一日の余韻を味わいながら、明日は丹波篠山へ。黒豆や焼き物など、里山に受け継がれる暮らしの文化をめぐる旅が続く。


NIPPONIA 播磨福崎 蔵書の館
 住所:〒679-2204 兵庫県神崎郡福崎町西田原1106

 電話:0120-293-958

 HP: https://nipponia-fukusaki.jp/

【DAY2】 丹波篠山 黒豆が育んだ暮らしをたどる

盆地特有の寒暖差が、丹波篠山の黒豆をおいしく育てる。


翌朝、福崎町を後にし、次に向かうのは丹波篠山。福崎町から丹波篠山までは車でおよそ1時間半。山あいの風景を抜けていくと、次第に城下町らしい落ち着いた町並みが見えてくる。国の史跡に指定されている篠山城跡を中心に発展したこの町は、盆地特有の寒暖差が黒豆や松茸などのブランド食材を育んできた土地でもある。


小田垣商店で知る「丹波黒」の世界

丹波黒豆の老舗「小田垣商店」の店構え。「黒まめ」の暖簾がかかる。


丹波篠山を代表する黒豆「丹波黒」を扱う老舗「小田垣商店」は、1734年に創業。290年近い歴史を持つ本店は、国の登録有形文化財にも指定されている。白壁と瓦屋根が続く堂々とした店構えに、老舗ならではの風格が漂う。一歩足を踏み入れれば、選び抜かれた「丹波黒」の香ばしい香りが出迎えてくれる。


店内カフェ「小田垣豆堂」。梁を活かした空間から、庭を眺められる。

黒豆きなこのソフトクリームパフェ(1200円/税込)は、小田垣豆堂の定番スイーツメニューのひとつ。


店内に併設されたカフェ「小田垣豆堂」は、有名な建築家が手がけた空間。高い梁組みをそのまま活かした天井や、庭に面した長いカウンターに、古い建物の趣が残る。運ばれてくるのは、「丹波黒」を使った香ばしい黒豆茶と、軽食やスイーツ。窓の外に広がる庭を眺めながら、旅の合間にひと息つける場所だ。


〜もっと知りたくなったら、豆に触れてみる〜

家族で参加できる、黒豆の選別体験。


小田垣商店で「丹波黒」の奥深さに触れた後は、季節ごとに開催される体験プログラムにも参加してみたい。なかでも黒豆の手より選別体験では、収穫された「丹波黒」を一粒ずつ見極めながら選り分ける。豆の手触りや重みを感じることで、「丹波黒」が受け継がれてきた理由や、その品質を支える手仕事への理解が深まるはず。


豆家 WITH NIPPONIA。黒豆の里に泊まる

110年ほど前に建てられた住居を改修した一棟貸しの宿「豆家」。

畳と木の質感に包まれた、「豆家」のリビング。

昔の梁を残している高い天井の下に、大きなベッドが置かれている寝室。


小田垣商店の敷地内には、一棟貸しの宿「豆家」がある。和洋折衷の建築を活用した空間で、朝夕の光や町の静けさを感じながらゆっくりと過ごせるのが魅力だ。老舗商家の歴史や文化にふれながら、丹波篠山での一夜を楽しみたい。


小田垣商店 本店/小田垣豆堂(カフェ)
 住所:兵庫県丹波篠山市立町19番地
 電話:079-552-0011
 https://www.odagaki.co.jp/


豆家

住所:兵庫県丹波篠山市立町15番地

電話:079-556-8048

HP:https://mameya.odagaki.co.jp/


山里料理 まえ川で里山の恵みをいただく

江戸時代の面影を残す、篠山城下町の街並み。


丹波黒豆の文化に触れた後は、その土地の恵みを味わいたい。小田垣商店から徒歩4分ほど、城下町の一角に佇む「山里料理 まえ川」では、丹波篠山の風土を映した一皿に出会える。


店主の前川友章さんは、京都で約12年にわたり懐石料理の修業を積んだ後、故郷の丹波篠山へ戻った。

オクラ、ドイツウリ、赤紫蘇の泡、ズッキーニ、人参、鱧のゼリー寄せ

ジャガイモの白味噌和えとシカの自家製ハムに、畑で採れたハーブを添えたもの。

「まえ川」では、四季折々の食材を活かしたおまかせコースを提供する。猪や鹿といったジビエも丹波篠山の恵みとして取り入れ、素材の持ち味を引き出した料理に仕立てている。季節ごとに表情を変える料理を通して、この土地が育んできた食の豊かさに触れることができる。
器には地元作家による丹波焼が使われ、料理だけでなく器からも、この土地に受け継がれてきた文化を感じられる。食材、器、空間を通して、丹波篠山の魅力を味わうひとときとなる。


山里料理 まえ川

住所:兵庫県丹波篠山市立町93 

電話:090-2065-4595 

営業時間:11:30~15:00(LO 13:30)、17:00~22:00(LO 19:00) 

定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日、ほか臨時休業あり) 

HP:http://maekawa-sasayama.com/ 

【DAY3】 丹波篠山 城下町に受け継がれる時間を歩く

丹波焼の里にある登り窯。約15mの斜面に沿って9つの焼成室が連なり、今も窯元たちの手で使われ続けている。


丹波篠山の食文化に触れた翌日は、山あいの工房を訪ね、受け継がれてきた焼き物の世界へ。城下町から車で約20分、今田(こんだ)地区には、日本六古窯(日本を代表する古い焼き物産地)のひとつに数えられる丹波焼の里が広がっている。約850年にわたり受け継がれてきた焼き物文化は、今も多くの作り手によって守り続けられている。


丹文窯を訪ね、丹波焼の世界を知る

丹文窯4代目・大西雅文さん。土の中に含まれる空気を抜くために行う土練りは、経験が問われる作業だ。

工房の麓にあるギャラリー「TANBUNGAMA109」では、登り窯で焼いた大西さんの作品だけが販売されている。


今田(こんだ)地区の一角に工房を構える「丹文窯」では、4代目・大西雅文さんが土選びから焼成まで丁寧に向き合い、作品を生み出している。工房の麓にあるギャラリー「TANBUNGAMA109」には、登り窯で焼かれた作品が並び、一つひとつ異なる土の風合いや焼き色に出会うことができる。


この地域では17世紀初頭から、山の斜面を利用した登り窯が使われてきた。丹文窯でも現在、その伝統的な登り窯を使った焼成(しょうせい)を続けている。大西さんは、自ら丹波の山や田んぼで採取した土に、近くに残る約1,000年前の窯跡周辺の土をブレンドし、この土地ならではの表情を持つ器を制作している。


〜もっと知りたくなったら、土をこねてみる〜

「丹文窯」の陶芸体験では、白、水色、黒、茶色の4色から釉薬を選べる。

手びねりで、自分だけの形を作っていく。


丹波焼には決まった型がない。その自由さを体感できるのが、「丹文窯」の陶芸体験だ。粘土をこねて形を作り、好みの釉薬を選んで仕上げる。同じ形でも、選ぶ色によって焼き上がりの表情は大きく変わる。世界に一つだけの器を、自分の手で作り上げる時間を楽しみたい。


丹文窯 工房

住所:兵庫県丹波篠山市今田町下立杭67 

TEL:079-597-2089

https://tanbungama.com/


丹文窯SHOP(店・陶芸体験)

住所:兵庫県三田市西相野578-25

TEL:079-568-1031

営業時間:9:00-17:00

定休日:無休


篠山城下町ホテル NIPPONIA 城下町に暮らすように泊まる

篠山城下町ホテル NIPPONIAの客室棟「ONAE」。明治期に建てられた、銀行の頭取の邸宅を改修したもの。


「ONAE」の客室。かつて来客をもてなす茶室として使われていた、格式高い部屋。日本建築の伝統的な意匠がそのまま残る。


丹波篠山は、城を中心に商人や武士が暮らした城下町として発展してきた町。現在も商家や武家屋敷の面影を残す町並みが広がっている。
「篠山城下町ホテル NIPPONIA」は、こうした歴史ある建物を活用し、城下町そのものをホテルに見立てた滞在を提案している。フロントやレストランへ向かう道すがら町を歩く時間も、このホテルならではの体験のひとつ。まるで住民の一人になったかのように、町の日常に溶け込むことができる。


朝食の和膳には、丹波立杭焼の土鍋で炊いた地元米、丹波黒豆の味噌を使った味噌汁など、旬の食材が並ぶ。


ゆっくりと静かに過ごした翌朝は、丹波篠山の恵みを味わう朝食とともに、この旅を締めくくる。妖怪の伝承にふれた福崎町、黒豆と器の文化が息づく丹波篠山。3日間をかけて出会ったのは、土地に根ざした暮らしの物語だった。


今回訪ねたのは、日本各地に広がるNIPPONIAのほんの一部にすぎない。兵庫で出会ったように、それぞれの土地には固有の歴史や文化、そして暮らしの物語が息づいている。そんな一期一会の出会いを求めて、NIPPONIAからNIPPONIAへ、日本のローカルの魅力を知る旅を続けてみるのも一興だ。


篠山城下町ホテル NIPPONIA

住所:〒669-2342 兵庫県丹波篠山市西町25番地(ONAE棟)

TEL:0120-210-289(受付11:00〜20:00)
公式HP:https://www.kazenoheritage.jp/hotels/sasayama/

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