カニと絶景を味わい、豊かな風土を列車で旅する冒険の物語。

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カニと絶景を味わい、豊かな風土を列車で旅する冒険の物語。

秋はベニズワイガニ、冬には松葉ガニの漁が解禁され、この季節はカニ旅を楽しむ人たちでにぎわう山陰地方。その中心地のひとつである兵庫県・浜坂は、日本で唯一、「かにソムリエ」がもてなす町で、ここでしか味わえない特別な食体験が待っている。温泉地としても有名な浜坂を起点に、山陰海岸ジオパークのダイナミックな景色を眺めながら鳥取砂丘へと続く、壮大なる鉄道の旅へ、いざ出発。

 

かにソムリエがもてなす町・浜坂で極上のカニ体験を。

 

9月1日に漁が解禁され、6月頃まで楽しめるベニズワイガニ。

 

兵庫県北部の海沿いに位置する浜坂は、姫路や神戸から特急で約2時間半~3時間、鳥取空港からは車で約30分と、電車でも飛行機でもアクセスしやすい、山陰地方を代表するカニの町。効能豊かな温泉も魅力で、山陰海岸ジオパークをめぐる旅の拠点にも絶好のロケーションだ。

 

カニピースで迎えてくれた「澄風荘」のかにソムリエのみなさん。

 

浜坂は日本で唯一「かにソムリエ」を養成する町として知られ、ソムリエになるには3年間で約30回もの研修を受け、厳しい試験に合格しなければならない。2007年に初めて37名が誕生して以来、現在は約50名のかにソムリエが宿や飲食店で活躍している。その代表格が、かにソムリエの宿「澄風荘」だ。ここには女将を筆頭に5名のかにソムリエが常駐し、極上のカニ体験を叶えてくれる。

 

和の情緒あふれる囲炉裏の間。カニや海鮮を炭火焼で楽しめる。

 

「澄風荘」は6室だけの小さな宿。全室個室の食事処で、囲炉裏や七輪を囲んでカニや海鮮を堪能できる。

 

ズワイガニ&海賊焼きプラン1泊2食付き21800円~(2名1室)。

 

かにソムリエが食べごろを見極め、むき方にも職人技が光る。

 

かにソムリエがいる宿では、食事のスタート時間に合わせて、生きているカニを水槽から取り出してさばくので、最高の鮮度で味わえるのも産地ならでは。火の入り具合の見極めが難しい焼きガニや茹でガニも、プロが食べごろを教えてくれるので、カニを食べ慣れた人でさえ「これほどおいしいカニは初めて」と驚くほど、その旨味と食感は格別。かにソムリエの鮮やかなパフォーマンスも見応えがあり、感動の食体験を演出してくれる。

 

浜坂漁港のタグ付き活松葉かに1杯コース。1泊2食付き41800円~(2名1室)。

 

11月6日から3月20日頃までは、カニの王様と呼ばれる「松葉ガニ」を最高の状態で味わえる季節。本物のカニ好きが全国から集まる浜坂で、極上のカニ体験に酔いしれよう。

 

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湯けむりに誘われて、浜坂の町を歩く。

 

ユートピア浜坂近くにある、浜坂温泉の源泉塔。

 

浜坂温泉の源泉温度は73度で、泉質は塩化物泉。

 

「澄風荘」のある浜坂温泉郷は、浜坂温泉、七釜温泉、二日市温泉の3つの温泉の総称で、環境省が指定する国民保養温泉地に兵庫県で唯一選ばれている名湯だ。この温泉の恵みを象徴するように、町内3か所に温泉塔が建てられ、こんこんと湧き出す源泉から立ち上る湯けむりが、のどかな町並みに風情を添えている。

 

「ユートピア浜坂」の敷地内にある温泉たまごゆで場所。

 

玉子と温泉玉子用ネットは近隣スーパーで購入を。

 

日帰り温泉施設「ユートピア浜坂」の敷地内には、この源泉を利用した「温泉たまごゆで場所」があり、近隣のスーパーでは玉子売り場に温泉玉子用ネットが置かれているのも温泉の町ならではの光景だ。

 

江戸時代の風情を残す「あじわら小径」。

 

待つこと約35分で、ぷるぷるの温泉玉子が出来上がる。

 

温泉玉子のゆで時間は約35分。その間、江戸時代からの風情が残る町並みを歩いてみたい。ユートピア浜坂の近くを通る「あじわら小径」は、浜坂の市街地を流れる味原川(あじわらがわ)の下流、川沿いに整備された約500mの散歩道。旧家や古い石垣のほか、揚げ橋や船着場など、海運でにぎわった往時の面影が今も息づいている。ゆっくり散策して戻ってくると、温泉玉子がちょうどゆで上がる頃。温泉玉子を味わった後は、日帰り温泉に浸かってリフレッシュを。

 

日本海の絶景と鉄道遺産が待つ、鉄道ファンの聖地へ。

 

 

浜坂駅から山陰本線で約14分。JR餘部(あまるべ)駅に降り立つと、すぐ目の前に広がるのは、高さ41.5mの展望施設「余部鉄橋 空の駅」。1世紀以上もの間、JR山陰本線を支えてきた旧余部鉄橋の橋脚をそのまま利用した展望台で、日本海の雄大な景色を一望できる絶景スポットだ。

 

JR餘部駅のホーム脇に残る旧軌道。

 

JR餘部駅から展望施設へは、ホーム脇に残された旧軌道を歩いて向かえば、かつて列車が走っていたレールの上を歩く体験ができ、鉄道ファンならずとも胸が高鳴る。

 

地上と空の駅をつなぐ、高さ41.5mの「余部クリスタルタワー」。

 

展望施設と地上をつなぐエレベーター「余部クリスタルタワー」は全面ガラス張り。日本海の大パノラマを眺めながら、約45秒の空中散歩が楽しめる。

 

廃線となった旧余部鉄橋の遺構を活かした公園。

 

空の駅駅長のリクガメ・そらちゃん。

 

展望施設の下には公園が広がり、橋脚跡を活かした東屋や自由広場が整備されている。その一角には、空の駅の駅長を務めるリクガメの「そらちゃん」の家も。毎日9:30~10:30と15:00~16:00の散歩タイムには、芝生の広場を元気に歩き回り、草をはむ姿を間近で見学できる。

 

地上から見上げる余部鉄橋と、その向こうに広がる日本海の眺めも圧巻。

 

余部鉄橋と列車、そして日本海が織り成す景色は、地上から見上げても迫力満点。公園に隣接する「道の駅あまるべ」には、余部鉄橋の歴史を紹介する展示コーナーもあり、名物グルメも楽しめるので、電車の待ち時間もあっという間だ。

 

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観光列車「あめつち」で行く、山陰海岸の旅。

 

日本海に溶け込むように、余部鉄橋を走る観光列車「あめつち」。

 

山陰本線の城崎温泉駅~鳥取駅間では、特定日に観光列車「あめつち」が運行。山陰地方は神社、お酒、歌舞伎、相撲など日本文化のルーツが多く、数々の神話が生まれた土地でもある。「ネイティブジャパニーズ」をコンセプトにしたこの観光列車「あめつち」は、天と地の恵みに包まれながら、山陰ならではの「古くて新しい日本」を発見する旅へと誘ってくれる。

 

全区間アテンダントが乗務し、車内販売を行う。

 

座席は全席指定。2人席を中心に、4人席やカウンター席も用意。

 

2両編成の車両は、鳥取県と島根県の素材を生かした内装で統一され、壁面や床の色は山陰の山々や日本海を表現。天井照明には因州和紙、テーブル装飾には石州瓦をあしらうなど、山陰の工芸品が随所にちりばめられ、車内にいながら山陰の魅力に触れられる空間になっている。

 

あめつちハイボールと、あめつち限定ラベルの米田酒造「花かんざし」。

 

木製ブックマーカー(2個セット)とトレインコースター。

 

物販カウンターでは、山陰の地酒やおつまみ、お菓子のほか、車内限定のオリジナルグッズも販売。斐伊川和紙を使った便箋や封筒、木製のブックマーカーなど、旅の記念やお土産に最適だ。

 

事前予約制の「あめつち特製御膳」(お茶付き)2250円。

 

城崎温泉駅~鳥取駅区間を全線乗車すると、車内限定の「あめつち特製御膳」を味わう楽しみも待っている。カニの身をふんだんに使った駅弁で知られる「アベ鳥取堂」の名物・元祖かに寿しをはじめ、とうふちくわやアユの甘露煮、柿の葉寿しなど、鳥取の特産品や伝統食を一度に堪能できる。滋味深い郷土の味と地酒に舌鼓を打ちつつ、車窓から日本海を望む時間は、列車旅ならではの贅沢なひとときだ。

 

鳥取砂丘で出合う、永遠と儚さを刻む砂のアート。

 

なだらかで美しい曲線を描く、高さ47mの砂の丘「馬の背」。

 

観光客が少ない砂丘西側は、手つかずの風紋に出合える確率が高い。

 

山陰海岸ジオパークをめぐる旅の最後を飾るのは「鳥取砂丘」。鳥取砂丘の自然は、風化した砂が風と波とによって運ばれ、長い年月をかけて形成されたもの。季節や天候、時間帯によってさまざまに姿を変えることから、「生きている砂丘」と呼ばれている。風が描き出す風紋や深さ10mにもなるスリバチなど、まるで砂の芸術作品のよう。

 

夕暮れ時には砂丘が茜色に染まり、コントラストがドラマッチック。

 

砂丘の入口から、一番の名所である高さ約47mの小高い丘「馬の背」までは直線距離で400mほど。頂上からは、美しい弧を描く日本海を一望できる。

 

らくだライド体験(1人乗り)1600円。記念撮影は650円。

 

砂丘の入口ではラクダと記念撮影をしたり、周辺を散歩することも。ラクダの上から眺める砂丘もまた格別だ。

 

自然の営みと文化を未来へとつなぐ兵庫と鳥取をめぐる旅は、これからも新しい出会いと物語を紡いでいく。

 

 

(掲載スポット)

澄風荘

https://syofuso.com/

 

ユートピア浜坂

https://www.town.shinonsen.hyogo.jp/page/?mode=detail&page_id=2229fa7578f92aca7a8800bf1df7e3b7

 

余部鉄橋展望台「空の駅」

https://michinoeki-amarube.com/soranoeki/

 

観光列車「あめつち」

https://www.jr-odekake.net/railroad/kankoutrain/ametuchi/

 

鳥取砂丘

https://www.sakyu-vc.com/en/

 

らくだや

https://rakudaya.info/