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風景をつなぐ列車の旅。城崎温泉から海の京都へ
風光明媚な列車旅が楽しめることでも知られる兵庫県。その中でも人気を集めているのが、歴史ある城崎温泉に滞在しながら、兵庫と京都を周遊できる観光列車「丹後あおまつ号」だ。旅の起点となる城崎温泉へは、神戸、大阪、京都から特急で約2時間半。温泉と美酒、そして日本海の絶景をつなぐ列車の旅へ。
旅の始まりは兵庫が誇る名湯・城崎温泉から。
柳並木の大谿川(おおたにがわ)沿いに温泉街が広がる城崎温泉。
開湯1300年の歴史を誇り、志賀直哉をはじめ多くの文人墨客に愛された城崎温泉。大谿川(おおたにがわ)に架かる太鼓橋と柳並木が織り成す景色は、夕暮れとともに幻想的な表情を見せ、訪れる人を別世界へと誘ってくれる。城崎温泉は、「駅は玄関」「道は廊下」「宿は客室」「外湯は大浴場」という考えのもと、温泉街を一つの宿に見立て、外湯巡りや旅館外での食事を推奨している全国でも珍しい温泉地だ。さらに、宿も外湯もすべてタトゥーフリーという開かれた文化が根付く。
王橋越しに見る「一の湯」。歌舞伎座のような建物が印象的。
天然の岩盤を削って造られた「一の湯」の洞窟風呂。
7つの外湯の中で、温泉街の中心に位置する「一の湯」は城崎のシンボル的存在。江戸中期は「新湯(あらゆ)」という名前だったが、名医・香川修徳が「城崎新湯は天下一」と賞賛したことから、「一の湯」に改名したといういわれのある名湯だ。
京都御所風の荘厳な造りの「御所の湯」。
外湯で唯一、全面露天風呂の「御所の湯」。
美人の湯として名高い「御所の湯」は、年間約40万人が訪れる人気の外湯。庭園風の露天風呂からは山の緑と滝が眺められ、開放感が格別だ。日帰り入浴の場合、各外湯の受付で外湯1日券(大人1500円、小人750円)を購入すれば、7つの外湯(さとの湯は休業中)が入り放題になる。
城崎の宿泊の予約
温泉街を散策し、温泉玉子作りに挑戦
城崎温泉元湯のそばにある「城崎ジェラートカフェChaya」。
城崎ジェラート400円~。左から、黒豆よもぎ、マンゴー、木いちご。
外湯めぐりに加えて、ご当地グルメの食べ歩きも楽しめる城崎温泉。薬師公園ポケットパーク内にある「城崎ジェラートカフェChaya」は、天然素材を使ったジェラートや但馬牛まんなどが味わえる人気のカフェだ。
温泉玉子体験料は300円。玉子は1個50円で棚から自由に選べる。
城崎温泉の源泉が湧く温泉たまご場。
パーク内には城崎温泉の源泉である元湯が湧き出し、温泉たまご作りが体験できる。ここでの楽しみ方は、まず店内で新鮮な玉子を購入し、屋外の温泉たまご場へ。専用のネットに入れて源泉の中に沈めれば、約9分で温泉玉子が完成する。
城崎温泉の源泉を引いた足湯。
エッグカッターで玉子の上部を蓋のように外し、スプーンで味わう。
待ち時間は、店先の足湯に浸かってリラックス。足先からじんわりと温まってきた頃、ちょうど温泉玉子が出来上がる。約65~70度の温泉でゆっくりと加熱するため、黄身がとろりとした半熟に仕上がり、白身はぷるぷるの口当たりに。普通のゆで卵では味わえない、独特の食感と濃厚な風味を堪能できる。
湯上がりに味わう、こだわりのクラフトビール。
温泉卵のビスマルク1890円、地ビール4種飲み比べ1280円。
城崎温泉の町並みが眺められるカウンター席が人気。
外湯めぐりの仕上げに立ち寄りたいのが、城崎温泉のメインストリートに立つ「地ビールレストランGUBIGABU」。湯上がりに浴衣のまま気軽に立ち寄れるカジュアルな雰囲気で、風情ある町並みを眺めながらクラフトビールが味わえる。
4種類のクラフトビールをタップで楽しめる。
お土産に人気の瓶ビール。左から、ピルスナー、スタウト、ヴァイツェン、カニビール。
醸造所直送のビールは、ピルスナー、ヴァイツェン、スタウトのほか、特産の蟹にちなんだカニビールもラインナップ。ここでしか味わえない個性豊かなビールは、ぜひ飲み比べセットで楽しみたい。
但馬牛のステーキ丼3000円。
兵庫のブランド牛・但馬牛を使った「但馬牛のステーキ丼」は、ジューシーな肉の旨味を存分に堪能できる贅沢な一品。石窯で焼くピザは、温泉卵をトッピングしたビスマルクなど全8種類あり、どれもビールと相性抜群だ。
城崎温泉のメインストリート、大谿川(おおたにがわ)沿いに立つ。
11:30から22:00まで通し営業で、ランチから夕食、軽く一杯まで使い勝手もよし。隣には外湯「柳湯」もあり、湯上がり処としてもぴったりの一軒だ。
城崎の宿泊の予約
観光列車「丹後あおまつ号」で天橋立へ。
日本海の白砂青松を象徴する“松”をテーマにした「丹後あおまつ号」。
城崎温泉を後にし、隣駅の豊岡駅へ。ここから京都丹後鉄道で京都の天橋立を目指す。豊岡駅と途中の網野駅から西舞鶴駅方面へ向かう下り便は、観光列車「丹後あおまつ号」が 1 日 1 便ずつ運行していて、事前予約なしで普通運賃だけで気軽に乗車できる。
車内は4人がけの席を中心に、カウンター席とソファ席も完備。
列車デザインは、世界的なインダストリアルデザイナー・水戸岡鋭治氏が手がけ、日本海の白砂青松を象徴する“松”をテーマにした木の温もりあふれる車内が旅心をくすぐる。広い窓から景色を望み、列車ならではのゆったりとした旅のひとときを演出してくれる。
トレインアテンダント乗務区間では車内販売も楽しみ。
アイスコーヒー450円と丹鉄うさくまケーキ1個200円。
トレインアテンダントが乗務する区間では、車内カウンターでドリンクや軽食も販売。城崎珈琲焙煎所が焙煎したオリジナルブレンドの丹鉄珈琲をはじめ、地ビールや和菓子など沿線のおいしいものが揃う。
窓に広がる絶景を楽しめるカウンター席。
窓に面したカウンター席は景色を望む特等席。のどかな田園風景は、ただ眺めているだけで心が和む。天橋立付近では白砂青松の海の景色が広がり、美しい日本の風景に心が洗われる。
「丹後あおまつ号」のトートバッグ1000円。
車内では丹鉄オリジナルグッズも販売。水戸岡鋭二氏デザインのクリアファイルや手ぬぐい、旅先で重宝するトートバッグなど、旅の思い出を彩る品が揃う。
イギリス人杜氏が醸す酒蔵を訪ねて。
創業は天保13(1842)年。江戸時代に建てた酒蔵も残る。
豊岡駅から丹後鉄道で約20分。列車旅は兵庫から京都へと舞台を移し、かぶと山駅で途中下車。駅から歩くこと3分、京都北部の久美浜にある「木下酒造」は、イギリス人杜氏フィリップ・ハーパー氏で知られる酒蔵だ。
外国人として初めて杜氏となったフィリップ・ハーパー氏。
名門オックスフォード大学を卒業後、1988年に来日したハーパー氏は、日本酒の奥深さに魅了され蔵人の道へ。奈良の「梅乃宿酒造」で10年間修業を積み、南部杜氏資格を取得後、大阪の「大門酒造」を経て、2007年に「木下酒造」の杜氏に就任。すると初年度にして全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、その実力と挑戦的な酒造りで「玉川」ブランドを全国に広めた。
現在の酒造りでは、純粋培養酵母や乳酸の添加が主流だが、代表銘柄「玉川」の生酛・山廃商品は、水、米、米麹以外は一切無添加。「自然仕込」と名付けられたこの製法で「土壁や梁に棲みついている微生物の力で、唯一無二の日本酒が生まれます」とハーパー氏。さらに、「『玉川』の酒はたくましく、日本酒では珍しい常温管理・常温熟成が可能です。また、“変化を楽しむ酒”という『玉川』のコンセプトに沿って、商品の多くは寝かせてから熟成酒として出荷しています」と語る。
日本画家の坂根克介氏がデザインしたロゴとラベルも素敵。
ハーパー氏に、世界に届けたい日本酒を選んでもらった。定番の山廃シリーズより「玉川 自然仕込純米酒山廃無濾過生原酒」、江戸時代の製法で造った「タイムマシーン1712」、地元で長く愛される「玉川 特別純米酒」、フルーティーな「玉川 大吟醸」、そして、1枚1枚異なる古布で作るラベルが特別感を演出する長期熟成酒「IBUSHIGIN」シリーズと、どれも物語を感じられる1本だ。
酒蔵に併設された直売店。営業時間は9:00~17:00。
酒蔵直売店では日本酒の試飲サービスをはじめ、玉川の酒を使った地酒ソフトなども販売。季節限定酒や蔵直売限定の超希少酒も並び、一期一会の出合いが待っている。
e-Bikeで駆け抜ける天橋立と伊根の舟屋。
天橋立傘松公園から眺めた「天橋立」。
かぶと山駅から約1時間で京都の天橋立に到着。天橋立は「海の京都」と呼ばれる丹後半島の玄関口で、インバウンドの旅行者にはe-Bikeでの観光が人気を集めている。
e-Bikeのレンタルは1日2500円~。2泊以上の貸し出しや、乗り捨てもOK。
海の京都エリアでe-Bikeのレンタルやガイドツアーを行っているのが「Kyoto E-Bikes」だ。レンタサイクルの貸し出し拠点も複数あり、そのひとつが天橋立駅前にある土産店「智恵くらべ」。車種は本格的なスポーツタイプからシティサイクリング用まで豊富にラインナップ。目的や走行距離に合わせて選ぶことができ、旅の自由度がぐんと広がる。
天橋立の松並木をつなぐ青い橋「大天橋(だいてんばし)」。
白砂が広がる天橋立海水浴場。サイクリングの途中、ここで泳ぐ人も多い。
気軽にサイクリングを楽しむなら、全長約14kmの「天橋立1周コース」がおすすめ。海沿いに続く自転車専用道は勾配がなく、初心者や子連れファミリーでも安心してサイクリングを楽しめる。
伊根湾に沿って立ち並ぶ「伊根の舟屋」。
体力に余裕があれば、天橋立から「伊根の舟屋」を目指すコースへ。海沿いの国道178号線を走る片道18kmのコースは絶景の連続で、約1時間走れば伊根の舟屋に到着。全周5kmの伊根湾に沿って約230棟の舟屋が立ち並ぶ独特の景色が圧巻。事前予約をすれば乗り捨てもでき、旅程に合わせて柔軟に利用できるのも魅力だ。
兵庫と京都をつなぐ列車旅は、移動そのものがエンターテインメント。温泉に癒やされ、美酒に酔い、e-Bikeで絶景を走り抜けた時間は、出会った人たちの笑顔とともに鮮やかに心に刻まれていく。
(掲載スポット)
城崎温泉
城崎ジェラートカフェChaya
https://www.instagram.com/kinosakigelatocafe_chaya/
地ビールレストランGUBIGABU
観光列車「丹後あおまつ号」
https://travel.willer.co.jp/train/tantetsu/aomatsu/
木下酒造
https://www.sake-tamagawa.com/en/
Kyoto E-Bikes




