リピーターに支えられる人気の神戸十三佛霊場バスツアー。仏教の世界が、より身近なものに感じられます。
日本各地には、「十三佛霊場」と呼ばれる霊場巡りがあります。
十三佛とは、人が亡くなってからの供養に関わる十三の仏様を指すそうで、初七日から33回忌までを導くとされています。全国には京都、奈良、四国など、地域ごとに特色ある十三佛霊場会があり、仏教の信仰と文化を今に伝えています。
海と山に囲まれた神戸でも、長い歴史と多彩な文化に恵まれた十三名刹が、真言宗、天台宗、浄土宗という宗派を超え、平成6年に神戸十三佛霊場会を発足させました。奇しくも翌年発生した「阪神・淡路大震災」の復興の歩みとともに、傷ついた多くの地域住民に寄り添いながら、30年を超える活動を続けておられます。
長い活動のなかで、神戸十三佛霊場会の各お寺を年間通じて6回でまわるバスツアーも生まれ、リピーターに支えられ10年以上続く人気ツアーとなっています。
雨が降り、急に寒くなった10月下旬、再度山 大龍寺(たいりゅうじ)(神戸市中央区)と上野山 須磨寺(神戸市須磨区)の2か寺をまわるバスツアーに同行させていただきました。

このバスツアーの特徴のひとつは、僧侶の方がガイド役を務められること。今回は神戸市兵庫区にある能福寺の雲井雄善住職がガイド役となり、法話で磨かれた巧みな話術で、時に笑いを織り交ぜながら、仏教のあれこれをわかりやすく解説してくださいます。
これから訪ねる再度山 大龍寺に祀られるのは十三仏の内の弥勒(みろく)菩薩。一番仏に近いとされる弥勒菩薩が、悟りを開くとされているのが、なんと56億年7000万年後とのお話に驚愕!その頃地球はどうなっているのでしょうか…
そんなお話を楽しく聞いているうちに、あっという間に目的地、再度山 大龍寺の山門へ到着しました。

雨で滑らないよう気をつけながら、階段を登っていきます。


阿吽の仁王像がお出迎えをしてくださる仁王門を通ります。

そして、ご本尊の聖如意輪観世音菩薩(しょうにょいりんかんぜおんぼさつ)の祀られている本堂へ。

まずは、厳粛な本堂のなか、参加者全員で般若心経をお唱えします。

その後、井上隆晴副住職より、再度山 大龍寺の由来をお聞きします。建立は西暦768。美しい僧侶が往来で托鉢を続けておられる不思議な夢をたて続けにご覧になった和気清麻呂公が、ご本尊となられる「聖如意輪観世音菩薩」と出会い、この地に伽藍を建立されるまでのお話を淀みなく語られます。また山号となる「再度山」は、かの弘法大師が唐に渡られる前、命がけとなる渡航の安全と学問の成就を願ってここを訪れ、大願成就をされて再び訪れたことに因んでいるそうです。

このツアー向けにご開帳されたご本尊の聖如意輪観世音菩薩様を特別に拝ませていただきます。
(普段は非公開)

本堂を出たところで、「しいたけ茶」がふるまわれます。この日は急激に寒くなったので、参加者全員大喜び。温かいしいたけ茶をいただきます。あまりの美味しさに、お土産として購入される参加者が大勢おられました。

雲井住職がスマホのシャッターを押して、山門での記念撮影をサポートします。ご住職に話かける参加者も多く、終始和やかな雰囲気です。

神戸市内での昼食を挟み、次は「源平ゆかり」の古刹として名高い須磨区の須磨寺へ。

山門の前で、須磨寺の田村辰彰様よりお出迎えを受けます

須磨寺での最初のおもてなしは、須磨寺ゆかりの一絃琴(須磨琴)です。保存会の方々が着物姿でお出迎えしてくださいます。

一枚の板に一本の絃を張っただけのシンプルな琴は、一千百余年前の平安初期に、この須磨の地に流された中納言在原行平が、海辺で拾った板に緒を張って作った琴で我が身を慰めたのが始まりだといわれています。この一絃琴の伝統を守り育むため発足した保存会も、今年発足60周年を迎えられるとのこと。

演奏が始まります。須磨寺の名が有名になったのは、寿永3年(1184)源氏が須磨寺で陣を張ったといわれる一ノ谷の合戦です。源氏の武将・熊谷直実が我が子ほどの若者・平敦盛を泣く泣く討つ話は、平家物語で最も悲しい話ともいわれています。その平敦盛がもっていたとされる『青葉の笛』という源平ゆかりの曲も披露されます。

小池副住職も加わり、一本の絃から奏でられているとは思えない情緒ある琴の音と迫力ある太鼓のコラボ演奏が披露されます。


演奏後は、実際の一絃琴を見ながら、説明を聞きます。皆さん興味深々!

本当に絃が一本しかありません。

続いて、YouTuberとしても活躍されている小池陽人副住職の法話です。人生は思いどおりにならないという仏教の教え『一切皆苦』について、最近ご自身が体験された行先になかなか辿り着かないタクシーを例に、時に笑いを取りながらお話されます。コロナ禍を経て、日常のありがたさを思い知りましたが「思い通りにならないことが当たり前」を受け入れることで、人生は少し楽に過ごせるかもしれません。『一切皆苦』を言葉のお守りに加えてほしい、という小池副住職のお言葉がストンと腑に落ちます。

場所を本堂へ移し、参加者全員で、この日2回目の般若心経をお唱えします。

それから宝物館へ。入口すぐのところに、さきほどお話をお聞きした青葉の笛が飾られています。熊谷直実が平敦盛を討ち取る物語はどこかフィクションにも聞こえる美しさと哀しさをもっていますが、こうして笛を眺めていると、笛の音で我が身を癒しながら、戦の世に散っていった実在する若き敦盛を想い、胸が締め付けられます。


宝物殿を出るとすぐ、一ノ谷での平敦盛と熊谷直実の一騎打ちの場面を再現した源平の庭があります。この時、二人はどんな気持ちで向き合ったのでしょうか…。平和であることのありがたさを感じながら、須磨寺を後にします。

帰途につくバスに乗り込む際、満面の笑みで参加者をお迎えする能福寺・雲井住職。このバスツアーがリピーターに支えられ、長年続くのは、訪問先となるお寺での特別で心のこもったおもてなしと、ガイド役となる雲井住職のファンが多くおられるからではないかと感じました。

この日、それぞれのお寺よりお土産をいただきました。


このバスツアーは2026年も6回シリーズで計画されていて、お寺の法要に参加できる回もあるそうです。また、初回から参加される新規の方には、各回で訪問するお寺の御朱印をまとめる特別な御朱印帳のプレゼントがあるそうです。(御朱印は別途有料)

各お寺でお唱えする般若心経もついています。

2026年も目前です。新しい年、神戸に息づく歴史と文化を垣間見ながら、趣の違う十三寺を巡る旅に、ぜひご参加されてみてはいかがでしょうか。
https://kpt.jp/toppage/plan-01/241076
<第1回>1/12(月・祝)転法輪寺(てんぽうりんじ)・性海寺(しょうかいじ)
<第2回>3/29(日)石峯寺(しゃくぶじ)・能福寺(のうふくじ)
<第3回>5/12(火)多聞寺(たもんじ)・太山寺(たいさんじ)・如意寺(にょいじ)
<第4回>6/24(水)念仏寺(ねんぶつじ)・須磨寺(すまでら)
<第5回>10/18(日)天上寺(てんじょうじ)・無動寺(むどうじ)
<第6回>12/7(月)大龍寺(たいりゅうじ)・鏑射寺(かぶらいじ)
神戸新聞旅行社