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神戸と淡路島の自然でリトリート
大阪・京都という都市に隣接している兵庫県は、海と山に囲まれており、美しい景色に出合える。歴史ある港町・神戸から瀬戸内海に浮かぶ淡路島をめぐるコースでは、自然とふれあう体験を通じて自身の心と身体に向き合う「ウェルネスツーリズム」を楽しめる。
ワイルドな岩場を登るハイキング
1868年の開港後、国際貿易港として発展してきた神戸市。市街地の北側に横たわる六甲山は東西約30kmの山地であり、新日本百名山にも選ばれる関西屈指の人気登山スポットだ。山と街が接近しているため神戸都心部からのアクセスもよく、ふもとを通る鉄道の駅を基点にして登山やハイキングを楽しめる。
数多い登山道の中でも人気なのは、ロックガーデンを通って最高峰を目指すルートで、歩行時間は約5時間。岩場を歩くので登山用の装備がおすすめだ。
阪急電鉄の芦屋川駅をスタートして住宅街を進んでいくと、登山道の入口に着く。しばらく登ると、花崗岩が長年の風雨で浸食して形成されたロックガーデンが広がる。ゴツゴツした岩場を手を使ってよじ登る場所がところどころにあり、ちょっとしたクライミング気分。
大小の岩が折り重なるロックガーデン。彼方に神戸の街と海が見える
その先、標高447mにある風吹岩のワイルドな姿も見どころの一つ。晴れた日は神戸から大阪にかけての大パノラマが美しい。
風吹岩。
さらに歩みを進め、標高931mの山頂「六甲山最高峰」へ。六甲山系北側の有馬方面など雄大な景色を見下ろせる。
標高によって変わっていく景色を楽しみながら、身体を動かす喜びを感じよう。
六甲山上で地産地消のランチを
六甲山は登山以外にも見どころが多い。山岳リゾートとして開発が行われてきた六甲山上には、神戸市立六甲山牧場や六甲ガーデンテラスなど、たくさんの観光施設が点在する。
中でも六甲山サイレンスリゾートは、2019年にオープンした施設。1929年に建てられ、国の近代化産業遺産に認定された旧六甲山ホテルを、建築界の巨匠ミケーレ・デ・ルッキのディレクションにより修復した。
2017年に閉館した六甲山ホテルを修復。
旧館(旧六甲山ホテル)の「カフェテリア」の天井には、1929年製のステンドグラスがそのまま残されていて、建物がもつ歴史を感じられる。
海側に建つレストラン「空のダイニング」では、大阪湾と神戸全域、淡路島までの絶景を望める。
テラス席からの眺め。
ランチとディナーで鉄板焼き、バーベキュー、コース料理、アラカルトを提供しており、食材には兵庫県産の但馬牛や八鹿豚、猪名川町で作られた無農薬野菜を中心に使用。
但馬牛は神戸牛などブランド和牛のルーツともいわれ、赤身と脂の絶妙なバランスが高く評価されている。希少な八鹿豚は、良質で甘みのある脂が特徴。この2つを合いびきにした「但馬牛と八鹿ポークのハンバーグ」はアラカルトの人気メニュー。
「兵庫県で丹精込めて作られた肉のうまみや、野菜本来のおいしさを楽しんでください」とシェフが話す自信の一品だ。
但馬牛と八鹿ポークのハンバーグ(2500円)。赤ワイン、自家養蜂のはちみつ、エスプレッソを混ぜた甘くほろ苦いソースが絶品。
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秘境の滝で淡路島の歴史を知る
六甲山で癒やされたら、次は瀬戸内海最大の島であり自然豊かな淡路島へ。
神戸から島の中央部にある洲本までは高速バスで1時間20分ほど。淡路島南端は四国とも橋でつながり、洲本から徳島へは路線バスに乗って約1時間30分で行くことができる。
兵庫県は滝の名所が多いことで知られ、特に淡路島は水源となる高い山や大きな川がないものの、100以上の滝が確認されている。
そんな淡路島の滝を楽しめるのが、「“がいな滝”や渓流で過ごすウエルネスネイチャーツアー」だ。“がいな滝”とは淡路弁で“すごい滝”の意味で、ツアーでは観光マップに載っておらず、地元の人もほとんど知らない秘境の滝をめぐる。
ガイドを務めるのは、「スマイル∞リボン」の竹谷富士子さんとムーサフルさん。英語が堪能なムーサフルさんは、地元の人も知らない滝を発掘する“滝ハンター”でもある。
ムーサフルさん(左)と竹谷富士子さん(右)。
「降雨量が少ない淡路島では、1700年以上前から先人たちが農業用にため池をたくさん作り、それが滝の源流になっているのです。淡路島が古来から食材豊富なのは、水の循環システムを作り、維持してきた賜物です」と、ムーサフルさんは話す。
ツアーで訪れる滝はその時々で異なるが、通常2か所の滝をめぐって、半日ゆっくりと過ごす。
例えば、淡路市にある「ぜんざの滝」。キャンプ場の奥にある沢を登っていくと、鬱蒼とした森の中に落差15mの滝が現れ、幻想的な雰囲気だ。
ぜんざの滝。
また、洲本市の「美耶滝」は、迫力のある大きな岩壁を水が流れ落ち、神聖な空気が漂う。
「ここは古くから修験道の場だったといわれていて、岩には今では判読できない古代文字が掘られているんです」とムーサフルさん。
美耶滝。
神話や歴史の知識をまじえた解説が興味深い。滝を通して、知られざる淡路島の魅力を発見できるはずだ。
アートの感性を磨く藍染体験
淡路島で育った藍の葉を原料とした一点ものの藍染体験ができるのが、藍染工房併設ショップ「AiAii」。
天然藍染とは、藍の葉を乾燥・発酵させた“すくも”に灰汁を加えて自然発酵させる「発酵建て」という伝統技法で染色すること。藍染めは天然原料を使っているので体にやさしく、使い終わった染料液も土に還すことができて環境にもやさしい。サステナブルで自然とともにある染色方法だ。
藍色は「ジャパン・ブルー」と呼ばれ、日本を象徴する色として知られる。
この工房は2015年に淡路島に移住した岡田淳一さんと妻でイギリス出身のサリー・ハンコックスさんが営み、藍の葉の栽培から染料液づくり、藍染商品の制作まで、すべて手作業で行っている。
サリー・ハンコックスさん。
乾燥させた藍の葉。
体験できるのは、「絞り染め」という技法。てぬぐいやTシャツなど、白い生地を糸や輪ゴムなどで絞って、染料液につけて模様を出す。
「自由に模様をデザインできるのが藍染の面白さ。自分らしい感性で、オリジナルな柄を作ってください」とサリーさん。英語対応ができるため、外国人観光客も数多く訪れる。
まずは絞り方の例を見せてもらいながら、どんな模様を作りたいかプランを考え、輪ゴムやピンチで生地を絞っていく。
生地を染料液に2分浸けて揉みこむ工程を5回繰り返すと、水色から濃紺へとどんどん色が濃くなっていく。
生地を染料液につけて水で洗う作業を繰り返す。
生地を広げて初めてどんな模様になっているかわかるので、完成品を見るととても感激する。世界に一つだけの藍染作品づくりは、忘れられない思い出に。
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神戸ポートタワーで見る輝く夜景
存分に自然と触れ合ったしめくくりには神戸のベイエリアに戻り、美しい夜景を見てクールダウン。1963年の開業以来、神戸のシンボルとして親しまれている神戸ポートタワーからは、六甲山とは一味違う港町の姿を見ることができる。
神戸ポートタワーは2024年にリニューアルオープンし、フルオープンの屋上デッキが新設された。ガラス張りの空中回廊からは、都心でありながら山と海が接近する神戸の街並みを360°見渡せて、開放感たっぷり。特に「1000万ドルの夜景」と言われる夜の街は必見だ。
大観覧車など神戸のランドマークを一望できる(提供:神戸観光局)。
タワー内の展望フロアは「brilliance-赫(かがや)き」をコンセプトに、さまざまな仕掛けが施されている。
展望4階にある光のミュージアム「Brilliance Museum」は、ネオンふうのアートや、手をかざすと色が変わる塗り絵のような壁面など、ワクワクする体感型展示が並ぶ。
展望3階の回転カフェ&バー「Ready go round」は全国的にも珍しい床が回転する構造。約30分で1周し、刻々と変わっていく景色を眺めながら軽食を食べられる。
ディナーメニューの「神戸ポートタワーバーガー」(単品で1200円、ドリンクセットで1700円)。
輝く神戸の街を見下ろしながら、ゆっくりと旅の終わりをかみしめたい。
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六甲山ハイキング
問い合わせ先:トレイルステーション神戸
URL:https://kobe-rokko.jp/en/toreko/
六甲山サイレンスリゾート
住所:兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034
TEL:078-891-0650
営業時間:【空のダイニング】ランチタイム11:00~16:00、ディナータイム16:00~20:30(最終入店19:00、LO20:00)、【カフェテリア】11:00~18:30(LO18:00)
定休日:月曜、冬季期間は祝日を除く月曜~木曜(祝日の場合は営業、翌日を定休日)
URL:https://rokkosansilence-resort.com/
“がいな滝”や渓流で過ごすウエルネスネイチャーツアー
問い合わせ先:淡路島観光協会
TEL:0799-22-0742
営業時間:月曜~金曜9:00~17:00
料金:1人につき登録料3000円+体験料(チップシステム)
URL:https://www.awajishima-kanko.jp/taiken/detail.php?id=49
AiAii
住所:兵庫県洲本市海岸通2丁目3-19
TEL:0799-20-5252
工房併設ショップ営業時間:金曜・土曜10:00~17:00
※藍染体験は要予約で月~土曜まで受付
定休日:日曜
料金:てぬぐい・ハンカチ2500円~
神戸ポートタワー
住所:兵庫県神戸市中央区波止場町5-5
営業時間:展望フロア・屋上デッキ9:00~23:00(最終入場22:30、展望2階ショップは9:00~22:00)、低層フロア10:00~20:00(3・4階11:00~21:00、金・土曜・祝前日は~22:00)
定休日:無休
料金:展望フロア+屋上デッキ1200円(展望フロアのみは1000円)