◇「兵庫テロワールlab.」テロワール研究員レポート
食や文化を味わい楽しみ、それらが生まれたルーツや背景を探り、受け継いできた人の想いや技術に触れる。大地の恵みを堪能する“兵庫テロワール旅”の情報を、現地で体感した「テロワール研究員」の視点でお届けします。
「ニホンジカまるごと一頭有効活用」がコンセプトの鹿の専門企業
神戸・元町を中心にアパレル3店舗・飲食3店舗を展開
2025年4月、兵庫県立美術館内にもジビエとフードマイレージがテーマのレストランをオープン
ここ数年、注目度上昇中のジビエ料理ですが、神戸にはアパレル企業でありながら20年以上前から「ニホンジカまるごと一頭有効活用」を行っている会社があります。
株式会社メリケンヘッドクォーターズでは、農林業被害対策として捕獲された野生鹿の命を無駄にしないために、皮・骨・角・肉のすべてを活用し、衣類・服飾雑貨などを製造販売。さらに鹿肉料理専門店やジビエ精肉店なども展開しています。その取り組みをレポートします。
最初に訪れたのは、三宮の神戸阪急6階にあるセレクトショップ「ハイカラブルバード神戸」。出迎えてくださったのはマネージャーの平野友之さん。
店内には、ナチュラルテイストの服に加え、鹿革のバッグや角のアクセサリー、鹿骨の灰を釉薬に用いた陶器など、さまざまなアイテムが並んでいます。
店頭で目を引いたのが夏らしいワンピース19,800円(税込)。定番人気商品だそうですが、どこに鹿が使われているのかぱっと見ではわかりません。
《平野さん談》『襟や両袖、両裾などに使用しているボタンがすべて野生鹿革のボタンなんです。鹿の皮を塩と菜種油で揉み上げ、天日にさらして仕上げる「姫路白なめし」という技法で加工して作っています』。
野生の鹿皮は濡れても復元力があるため、洗濯機で洗えると聞いて驚きです。
バッグや財布などの皮革アイテムもたくさん揃っていて、どれもシンプルでカッコいい!野生の鹿革であるが故に革にも個性があり、キズやダメージなどがあるのも商品の魅力の一つだそう。
▲ 底に鹿革を採用し、ボディ部は再生素材のリサイクルナイロンを使った便利な折りたたみ仕様のバッグ。Mサイズ26,180円(税込)L、サイズ29,480円(税込)
《平野さん談》『鹿による農作物への被害は全国的な問題で、兵庫県でも毎年約4万頭の鹿が捕獲されていますが、大半が廃棄処分されています。人間の都合で捕獲された命なので、せめて貴重な資源として活用したいというのが当社の創業時からの思いなんです』。
「ニホンジカまるごと一頭有効活用」を実現すべく、25年前に元町のメンズセレクトショップ「ハウディードゥーディー」からはじまり、現在ではアパレル3店舗、飲食3店舗を運営。兵庫県内の各地にある認定施設で加工処理された鹿のすべての部位を自社で巡回回収し、皮と肉それぞれの冷凍貯蔵施設も整備するなど、一から利活用の仕組みづくりを行ってこられたそう。
《平野さん談》『利活用率を上げるには、捕獲後になるべく皮を傷つけないなど猟師さんや加工者さんの協力も不可欠なんです。鹿肉を取り扱ってくれる飲食店を増やす必要もあります。そのため当社の理念を伝え、協力の輪を広げることに力を入れてきました。兵庫県内で捕獲された鹿の活用率を見ると、2013年度はわずか2.1%でしたが、2023年度には29.3%にまで増加したんですよ』。
◇ ひょうごニホンジカ推進ネットワーク
https://hyogoshikanet.wixsite.com/hyogoshikanet
今年2025年4月には、兵庫県立美術館2階に直営店「Restaurant Rokumei saryu(レストラン ロクメイサリュウ)」もオープン。
海が望めるガラス張りの開放的な店内で、鹿肉を中心としたジビエが気軽に味わえます。扱っているのは、兵庫県で捕獲され、各地の認定施設で処理された安心安全な鹿肉のみ。
▲ 地元産の新鮮な野菜がたっぷりの「鹿生ハムと戸部農場クレソンのオープンサンド」1,250円(税込)
▲「猪鹿ボロネーゼ」1,650円(税込)
人気メニューは鹿生ハムと戸部農場クレソンのオープンサンド、猪鹿ボロネーゼ、ジビエウインナー盛合せ。軽食、デザートからコース料理(要予約・3,250円(税込)~)までが揃い、六甲ビールや神戸ジンもスタンバイ。ジビエ以外にも、紫蘇のファラフェル、有機トマトのポモドーロや野菜のキッシュなどベジタリアン対応メニューも用意されています。
美術館内にありますが、レストランのみの利用もOK、カフェ利用もできるそうです。
JR「元町駅」東口から徒歩2分の場所には、鹿肉料理専門店「鹿鳴茶流 入舩(ろくめいさりゅう いりふね)」もあります。
兵庫県立美術館内の「Restaurant Rokumei saryu」は洋風料理、こちらは和食&オリエンタル料理といった感じ。
この日頂いたのは、ランチメニューの「鹿カツレツ」。ライス・スープ・ライチティー付きで1,350円(税込)と、お得感いっぱいです。
野生鹿は筋肉質で、おいしく調理するには下処理に非常に手間がかかるそうですが、さすが専門店の職人技です。ジビエとは思えないほど柔らかくて食べやすい!クセも全然なくておいしい!
鹿肉は高たんぱく・低脂肪・低カロリーなヘルシー食材で、鉄分やビタミンBも多いので、女性におすすめです。
ランチメニューは他にも鹿の焼肉丼や鹿もも肉ステーキなどが揃っていて、どれもリーズナブル。店長さんによると、「ジビエを食べたことがない人にも気軽に試してみて欲しいので、リーズナブルな価格設定」なのだとか。
「ニホンジカまるごと一頭有効活用」をテーマに掲げ、鹿肉のすべての部位を扱っているため、タンやハツなど希少部位も味わえます。人気メニューは、鹿カツレツ、鹿ハツ/鹿タンの直火炙り、鹿生ハムユッケ風など。鹿肉だけでなく、猪肉や熊肉などのジビエ料理もあります。
自宅でジビエを楽しみたいという人向けに、「ハイカラブルバード ジビエ精肉店」もあります。場所は鹿肉料理専門店「鹿鳴茶流 入舩」の近く、元町駅から徒歩4分です。
内モモ、外モモ、ロースから、タン、ハツの希少部位まで、部位ごとに真空パックした鹿肉を販売。ホテルや飲食店への卸も手掛けておられるそう。鹿肉の精肉以外に、鹿生ハム、ジビエヴルスト、ジビエジャーキーなどの加工品も揃っています。
ジビエと聞くと、調理はハードルが高そうですが、こちらのお店では部位の選び方や調理方法も丁寧に教えて頂けます。
ジビエ料理は好きでよく食べますが、私も調理経験はゼロ。少量パックから購入できるので、鹿肉料理に挑戦してみたくなりました。
私は子ども向けお料理教室で講師をしているので、「命を頂く」ということも含めて、鹿肉を教室でもを扱ってみたいなと思います。
DATA:
◇ 株式会社メリケンヘッドクオーターズ
https://www.merican-hq.com/
◎ ハイカラブルバード神戸
住所:神戸市中央区小野柄通8-1-8 神戸阪急本館6階
Tel:078-200-7724
営業時間:10:00~20:00
定休日:神戸阪急の営業日時に準ずる
https://www.instagram.com/haikara_blvd_kobe_hankyu/
◎ Restaurant Rokumei saryu(レストラン ロクメイサリュウ)
神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1兵庫県立美術館2F
Tel:078-262-1011(兵庫県立美術館代表)、コース予約専用番号090-6218-0295
営業時間:11:00~17:30(LO17:00、コースLO16:30)
定休日:月曜(祝休日の場合は翌平日)
https://www.instagram.com/rokumeisaryu_hyogo_artm
◎ 鹿鳴茶流 入舩(ロクメイサリュウ イリフネ)
兵庫県神戸市中央区元町通1-9-8
Tel:078-321-0295
営業時間:11:30~15:00(LO14:30)、17:00~23:00(LO22:30)
定休日:水曜
https://rokumeisaryu.com/
◎ ハイカラブルバード ジビエ精肉店
兵庫県神戸市中央区三宮町3丁目2-8 1F
Tel:※電話非公開
営業時間:11:00~19:00
定休日:水曜
https://www.instagram.com/haikara_blvd_gibier/
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掲載日:令和7年8月22日