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100年以上の時を経て復興した幻の焼き物『王地山焼』

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私がレポートします!

稿
兵庫県庁に出向中の現役CA 
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30代
大阪府
サーフフィット
ANAから兵庫県観光振興課に出向中の現役CAです。出身は兵庫県たつの市です。兵庫五国の魅力を探りながら、地元の通な情報や行ってみたい兵庫のおすすめ観光スポットをご紹介します。CAといえば、各地の美味しいものを知り尽くしたグルメ!旅の楽しみに欠かせないグルメ情報も発信していきたいと思います。

◇現役ANA CAがおすすめする、兵庫の観光スポット特集シリーズ◇

ANAより兵庫県庁に出向中の現役CAが、兵庫五国の魅力を探りながら、おすすめ観光情報をご紹介します。食と文化のルーツを知る、食べる、体験する“兵庫テロワール旅”に出かけてみませんか?

第4弾は、『100年以上の時を経て復興した幻の焼き物“王地山焼”』をレポート

 

丹波篠山市で“幻の焼き物「王地山焼」”との出会い

兵庫県の中東部に位置する丹波篠山市。神戸や大阪から車で約1時間とドライブにもちょうど良い距離です。

丹波篠山といえば、城下町の風情を感じる河原町妻入商家群などの観光スポット、丹波黒大豆などの特産品、焼き物でいえば日本六古窯のひとつ「丹波立杭焼」が有名です。

 

 

そんな丹波篠山に、もうひとつ歴史ある焼き物があるのをご存じでしょうか?

それは「王地山焼」です。

 

 

初めて見たとき「うわ~、きれい!」と思わず声が出たほど、その艶やかな美しさに感動した「王地山焼」。

透明感のある緑がかったような青色と半立体の模様が印象的な青磁「王地山焼」は、兵庫県指定の伝統的工芸品です。

 

 

江戸時代末期、当時の篠山藩主であった青山忠裕が王地山の地に築いた藩窯が発祥と言われています。当時は中国風の青磁、染付、赤絵を主とした磁器窯として名声を博しましたが、藩の廃止と共に明治2年に廃窯となりました。

 

100年以上の時を経て復興した幻の焼き物

江戸時代から明治時代にかけて、50年ほどしか制作されていなかった王地山焼は「幻の焼き物」と呼ばれていました。

廃窯から100年以上の時を経た昭和63年、地域活性化の取り組みの一つとして、陶器所の復興が計画され、現在の地に王地山陶器所が建てられました。

 

 

昭和の中頃、都会では古いものを壊して高いビルが建てられていましたが、篠山ではその流れに逆行して、歴史ある古い建物を残そうとする活動が活発に行われていました。

そういった地域特性も王地山焼の復興に影響しているそう。

 

 

丹波篠山のふたつの焼き物「王地山焼と丹波立杭焼」

王地山焼は磁器、丹波立杭焼は陶器という違いがあります。王地山焼の原材料は主に石英や長石などの陶石、丹波立杭焼は主に陶土とよばれる粘土が原材料です。

 

 

磁器である王地山焼は、乾燥してから取っ手をつけたり細工ができ、粒子が細かいため、繊細な模様の彫刻ができます。

 

今回、「王地山焼」についてもっと多くの方にその魅力を知って頂きたく、丹波篠山市にある王地山陶器所を訪れ、5代目である竹内保史さんにお話を伺いました。

 

 

◎王地山焼の陶工になったきっかけは何でしょうか?

〈竹内さん談〉『きっかけは、高校の時の先生が王地山焼の初代と大学の先輩後輩という関係だったことで、先生に王地山焼をやってみてはどうかと言われたことが始まりです。大阪出身なので、その時は篠山も王地山焼も知らなかったですが、先生に勧められるまま弟子入りしました。』

 

◎王地山焼の特徴は?

〈竹内さん談〉『王地山焼の特徴は中国風の青磁であることです。昔は染付と青磁と半々で制作していましたが、今は青磁がメインです。これほど青磁をメインに制作しているのは全国でも珍しく、王地山焼くらいじゃないでしょうか。

伝統的な柄は「型」という技法で作ります。手彫りの土型に素地を押し当てて成形するため、器そのものを複雑な形にしたり、表面に繊細な半立体のモチーフを施すことが可能です。』

 

 

うっとりするような繊細な模様が美しい王地山焼。

江戸時代の王地山焼の収集家がいらっしゃるそうで、その方に焼物本体を借り、見本にして伝統柄の型を作られるそう。

歴史美術館に展示されるほど貴重な江戸時代の型を見せてくださいました。少し黒ずんだ様子から歴史を感じます。

 

 

〈竹内さん談〉『模様を浮かして彫るのはすごく大変で繊細な作業です。日中ずっと型を作り続けるということは大変なのでしないですが、もし作るとすればおそらく丸3日は型の制作にかかると思います。

この型は王地山焼と同じ粘土で作っており、一度素焼きしたものです。石膏ではなく陶石の粘土で作った型は劣化しづらく、割れない限り永久的に型を使い続けることが出来ます。そういう意味でも、型に技術をつぎ込むことが王地山焼を後世に残すということに繋がるんですよね。』

 

 

型抜きした素地は窯で素焼きすると薄いピンク色に変化し、水分と不純物が抜け粘土が焼き締まることで、固くなり小さくなります。

実際に、型と完成した小皿を並べてみると、一回り以上小さくなっており、その大きさの変化に驚きました。

 

 

王地山焼は釉薬によって3つの色に分けられ、彫りが深いところに釉薬が溜まり、焼くと色に濃淡がうまれます。

王地山焼独特の緑色の青磁。より使いやすい青白磁は、お料理との相性を考え生み出されました。透明釉をかけた真っ白な白磁もあります。

 

一般的に青は料理に合わないと言われますが、透明感のある緑がかった青磁は優しい風合いなので、料理と調和しその魅力を引き出してくれます。

青磁と料理のペアリングは、きっと新鮮な感動をもたらしてくれるはず!

 

 

 

美しい曲線が素敵な鎬(しのぎ)のデザインは本来の王地山焼の伝統柄にはなく、竹内さんのオリジナルのデザインです。

 

 

〈竹内さん談〉『高校の時に学校で2万円くらいするコンパスを買ったんです。せっかく良いコンパスを買ったけれどその使い道がなく、、。活用できないか考えた結果、このデザインに繋がりました。コンパスで下絵を描き、それを基に彫ることで、この曲線を描くことができます。

オリジナルデザインも用いながら伝統的工芸を受け継いでいくような製作をしています。』

 

 

 

王地山焼の文化の継承を見据えた活動をされている竹内さん。

曲線が美しい鎬のデザイン誕生のストーリーは意外で面白いですが、オリジナルデザインに込めた思いは、後世を見据えた熱いものでした!

 

 

歴史美術館で王地山焼のワークショップを体験

丹波篠山市立歴史美術館では、王地山焼の「箸置きづくり体験」と「小皿型抜き体験」のワークショップが行われています。

なんと、今回スペシャル講師として、贅沢にも竹内さんに作り方をご指導頂き、実際に体験してきました!

 

 

まず小皿の型を選びます。私は模様と形の好みで扇形の型を選びましたが、この形は難易度が高め!丸い形のほうが簡単だそうですが、せっかくスペシャル講師もいらっしゃるので、一番難しい型に挑戦します!!

 

 

まずは粘土を型の大きさまで伸ばし、適度な薄さでスライスします。 

 

 

 

型の上に粘土を載せ、その上から布を被せ、指で型に粘土を押し込むように真ん中から外側に向かって力を加え押さえていきます。

 

 

この時の力加減が非常に難しいです。

竹内さんは、指で押したときに型の中に粘土がピタッと入り込み止まる感覚が分かるのだとか。

さすが熟練の技です!私には全くその感覚は分かりませんでした、、。笑

 

強く押さえすぎると粘土が薄くなりすぎ、押さえなさすぎても型の模様がつかない為、力加減が想像以上に難しかったです。

 

 

次は型からはみ出た余分な粘土をワイヤーで切り取り、小皿の形に仕上げていきます。ワイヤーを型に沿って動かすと、すーっと滑るように粘土が切れる感覚がなんとも気持ちいい!

難しいと言われた扇形ですが、何とか形になりました。

 

 

型を外すとき、しっかりと模様がついているか心配でしたが、ちゃんとついていました。

 

 

模様がきれいに写り、今から焼き上がりが楽しみです!

次は、箸置き作りです。

 

 

箸置きの型も何種類かあるので、お好みの形を選んで作ることができます。私は、可愛らしい梅の形が気に入ったため、こちらの型で作成します。

 

 

丸めた粘土を型に押し当てて、しっかりと模様がつくよう押し込みます。

次に、型からはみ出ている部分をワイヤーで切り取り、箸置きの底を平らにすれば完成です。

 

 

仕上げにスタンプで自分だけのオリジナルの印をつけます。

 

 

この印付けにこだわって時間をかける方も多いのだとか。ローマ字や記号、カタカナなど様々な形のスタンプがありますので、記念にメッセージを書いたり、色んなデザインを考えるのも楽しいですね。

 

 

王地山陶器所で焼き上げ、約1ヶ月後に郵送されます。

自分が作った小皿や箸置きが届くまで、とても楽しみです!

 

 

完成品は郵送していただけますが、「また丹波篠山に来たいので」という理由から、郵送ではなく取りに来られる方もいらっしゃるそう。

それほど、丹波篠山が魅力的な場所だということですね!

 

王地山陶器所で匠の技に触れ、歴史美術館では作品作りを楽しめる「王地山焼」。その魅力は是非、丹波篠山の地で実際に目で見て感じ、ワークショップで体感してみてください。

 

◆東京ミッドタウンガレリア「THE COVER NIPPON」では1月31日まで『兵庫-HYOGO- Nipponと暮らす』(第2期)を開催中です。王地山焼も出展されていますので、是非、作品を手にとってご覧下さい。

イベント情報:https://thecovernippon.jp/20220715-hyogo/

 

◇THE COVER NIPPON『兵庫-HYOGO- Nipponと暮らす』(第2期)◇

場所:東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウンガレリア3階E-0305

TEL:03-5413-0658

営業時間:11:00~20:00 年中無休(年始を除く)

HP: https://thecovernippon.jp/

 

◇王地山陶器所 華工房◇

住所:丹波篠山市河原町431 

TEL:079-552-5888

休館日:火曜日(祝日の場合は開館)・年末年始(12/29~1/3)

開館時間:08:30~17:00

HP: https://ojiyamayaki.com/

 

◇丹波篠山市立 歴史美術館◇

住所:丹波篠山市呉服町53

TEL:079-552-0601

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始(12/25~1/1)

開館時間:09:00~17:00 ※受付終了16:30

HP: https://withsasayama.jp/history-museum/

 

◆小皿型抜き体験・箸置き作り体験◆

※事前予約制。当日の予約は受付不可の場合あり。

問い合わせ先:079-552-0601

体験の受付時間:10:00~15:00

小皿型抜き体験 体験料:2,500円(送料別途必要)

箸置きづくり体験 体験料:1個700円(送料別途必要)

その他、歴史美術館への入館料要

 

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